2019年9月19日 北海道新聞掲載
広島で6日に開かれた平和記念式典で、松井一実市長は政府に対し核兵器禁止条約への署名・批准を求めた。だが安倍晋三首相は記者会見で「現実の安全保障の観点を踏まえていない」と条約への署名に否定的な考えを示したのは、理解できない。
首相は被爆者団体との懇談で禁止条約には触れなかった。「首相は橋渡しをしておらず、ごまかしだ。本音は米国の核に頼っている」と批判されたのももっともだ。
南米ボリビアは6日、核兵器禁止条約に批准した。これで批准国は25ヵ国となり、条約発効に必要な50ヵ国・地域の半数に達した。同国の国連大使は「1945年の今日、広島に原爆が落とされた。あの日に亡くなった全ての人を忘れず敬意を示したい」と語った。
国連で禁止条約が採択されたのは「ヒバクシャ」の長年のカ強い訴えと国際NGOの精力的な活動が結実させた成果だ。条約を批准し全ての核保有国に核廃絶を求めることが唯一の被爆国、日本の首相がとるべき道だろう。